30/30/10。この意味がわかったという方は相当なスウェット通のはず。これは生地に使われた糸の番手を表しています。番手とは糸の太さで、1番が最も太く、数字が大きくなるにつれ細くなります。素材にはそれぞれの適番手があり、例えばデニムは10番手、ワイシャツには80〜100番手の糸を使うのが標準的とされます。裏毛のスウェットにも定番の糸番手があり、それが冒頭の「30/30/10」です。表糸に30、中糸に30、裏糸に10番手の糸を使った生地という意味で、慣例で中糸を省略し、ニッターの間では3010番(サンマルトオバン)もしくは「さんとー」と呼ばれます。今回、豊染工はスウェットの基本である「さんとー」をどこまで柔らかくできるかに挑戦しました。
まず、ベースとなる生地は吊り編みが得意なニッターに依頼しました。吊り編みは生地にかかるストレスを極限まで減らし、時間をかけて編み上げることで空気を含んだような柔らかい生地になりますが、この工場では吊り編みで培ったノウハウを生かし、特殊改造したシンカー編み機で吊り編みに匹敵するソフトで丈夫なさんとー裏毛が作れると言います。(豊さんが初めて現物を目にした時、吊り編みとの違いがわからなかったというので品質は折り紙付きです)
こうして編み立てた柔らかいさんとー裏毛に豊(ゆたか)ソフィを施しました。豊ソフィは何十と存在する柔軟剤のなかから、同社が有するタンブラー(熱源に蒸気を使用した日本で豊染工にしかない乾燥機で通常よりソフトに仕上がります)とベストな組み合わせを試行錯誤により発見。さらに豊染工の知見を結集して生み出されたスーパーソフト技法で、同社史上最大の柔らかさを生み出す加工です。
染めもウィンス染色と呼ばれる生地にストレスをかけない方法でゆっくりと色を入れ、明るめのネイビーで軽さを表現しました。程よい肉厚感で高級タオルのようなソフトさを持ちながら、パーカーに必要なハリ感も表現。豊ソフィによって3010裏毛が持つ可能性を最大限に引き出した人呼んでさんとーソフィ。豊な着心地が、身も心も優しく包み込んでくれます。